目次
1 はじめに
2 賭博罪になるのか
3 捜査機関の対応等
1 はじめに
最近、オンラインカジノのサイトを利用して賭博をした疑いがあるとして、有名人が捜査機関の事情聴取を受けたなどの報道があります。
オンラインで行われるバカラ、スポーツベッティング等は犯罪になるのでしょうか。
インターネットサイトの記事に「違法ではない」などの書き込みがあるのを見て、このようなオンラインカジノを利用した場合でも犯罪は成立するのでしょうか。
2 賭博罪になるのか
結論から申し上げれば、オンラインで行われるバカラ、スロット、スポーツベッティング等の行為には賭博罪(刑法185条。50万円以下の罰金又は科料)や常習賭博罪(刑法186条1項。3年以下の懲役刑(令和7年6月1日から拘禁刑))が成立する可能性が高いです。
「賭博」(刑法185条、刑法186条1項)とは、二人以上の者が偶然の勝敗により財物又は財産上の利益の得喪を争う行為をいいます。
「偶然の勝敗」とは、勝敗が偶然性に左右されることであり、当事者において確実に予見することができず、又は自由に支配することができない状態によって勝敗が左右されることをいいます。また、「財物又は財産上の利益」とは、金員に限られず、一定の財産的価値を有する客体全般をいいます。さらに、財物等の「得喪を争う」とは、勝者が財物等を得て、その反面、敗者がそれを失うことをいいます。
オンラインで行われるバカラ、スロット、スポーツベッティング等は、二人以上の者が偶然の勝敗により財物又は財産上の利益の得喪を争う行為であって、「賭博」に当たります。
また、仮に、インターネットサイトの記事に「違法ではない」などの書き込みがあるのを見て、違法なものだと思っていなかったとしても、自らやっている行為(バカラ、スロット、スポーツベッティング等)が、「二人以上の者が偶然の勝敗により財物又は財産上の利益の得喪を争う行為」であると認識・認容している(かまわないと思っている)以上、賭博罪の故意が認められることになります。
なお、刑法185条但書では「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は賭博罪が成立しないとされていますが、判例によれば、金銭を賭ける行為は、その金額が少額であっても、刑法185条但書の適用はないとされています(最判昭和23年10月7日刑集2巻11号1289頁)。
「賭博を反覆累行する習癖がある」場合には、常習賭博罪(刑法186条1項)が成立する可能性があります。
賭博行為を行ったインターネットサイトが海外のものであっても、賭博行為が日本で行われれば、日本の刑法が適用されます(刑法1条1項参照)。
3 捜査機関の対応等
オンラインによる賭博の疑いがかけられた場合、捜査機関(警察署等)から事情聴取のために呼び出しがあり、任意の事情聴取が行われます(罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合には、身柄拘束がされる可能性もあります)。
また、捜査に必要があるとして、スマートフォンやキャッシュカードが押収される場合があります(任意に差し出すように求められ、警察署に領置されます)。
全国的に、捜査機関は、オンラインの賭博行為には、賭博罪を適用して、(50万円以下の)罰金刑を求める傾向があるようです。
4 どのように対処するか
スマートフォンやキャッシュカードなどを押収された場合は、留置の必要がなくなったことや、押収された者に与える不利益が大きいことなどを主張して、押収された物の還付(刑事訴訟法123条2項、222条1項)を求めることが考えられます。場合によっては押収に不服があるとして準抗告(刑事訴訟法430条)を申し立てることも考えられます。
また、量刑(罰金額)をできるだけ軽くするために、①反省文(今回の原因、二度と今回のようなことしないための対策、今後の生活の見通しなどを記載したもの)の作成、②身元引受書(同居のご家族や勤務先の上司などが二度と犯罪をしないように監督すること等を誓う内容のもの)の作成等を行うことが考えられます。
なお、賭博によって借金を増加させた場合、破産の申し立てをしても借金が免除されない可能性があるため、注意が必要です(破産法252条1項4号参照)。
オンラインによる賭博行為を行った方の中には、問題の重大さについて、認識が不十分な方も少なくありません。仮に今回罰金刑になったとしても、次回は懲役刑(拘禁刑)に処せられる可能性が高いです。
できるだけ日常生活に支障をきたさないためであったり、量刑をできるだけ軽くしておくためにも、オンラインによる賭博行為に関して警察署から呼び出しを受けた場合には、できるだけお早めに、お近くの弁護士に相談されることをお勧めいたします。