目次
1 はじめに
1 はじめに

最近、相続に関するご相談が増えております。
相続には、被相続人(お亡くなりになった方)の遺言書がある場合と、遺言書がない場合があります。
遺言書がある場合であっても、遺言書どおりに遺産を分けると、税務上の不都合が生じたり、相続人間の争いが生じることもあり得ます。
このような場合、遺言書どおりではない遺産分割を希望する相続人も少なくないものと思われます。
今回は、被相続人の遺言書がある場合に関して、遺言書どおりではない遺産分割ができるか、解説いたします。
2 遺言書と異なる遺産分割

結論から申し上げますと、遺言書があっても遺言執行者がいない場合には、相続人「全員」(受遺者を含む。)が合意をすれば、遺言書どおりではない遺産分割協議も可能になります。
仮に、遺言執行者が指定されている場合でも、遺言執行者が相続人の一人であれば、遺言執行者を受任せずに、遺産分割協議を行うことも可能です。
3 遺言執行者がいる場合

では、遺言執行者が指定されている場合で、指定されている者が遺言執行者を受任した場合はどうなるのでしょうか。
遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産に対する管理処分権を失い、遺言執行者が管理処分権を有することになります(民法1012条、1013条)。
そのため、遺言執行者は、相続人全員の合意に基づいた遺言書と異なる財産処分を求められても、遺言書に基づいて執行を行うことができます。
遺言書に基づく執行が遺言執行者の本来の職務内容であって、相続人の意向に反したとしても、相続人に対する任務違反となるものではありません。
最高裁は、遺言執行者があるにもかかわらず、一部の相続人が遺言書に反して相続財産を処分した場合、遺言者の意思を尊重しようとする民法1013条により、その行為は絶対的に無効になるとして、第三者にも対抗できるとしています(最判昭和62年4月23日参照)。
4 遺言書と異なる遺産分割に遺言執行者は同意できるか

それでは、遺言執行者が執行の着手前に、相続人「全員」が遺言と異なる遺産分割協議を希望した場合、遺言執行者はこのような遺産分割協議に同意することができるのでしょうか。
これに関しては、遺言執行者の同意のもと、利害関係を有する関係者「全員」(相続人・受遺者)で遺産分割の合意がなされ、かつ、その履行として処分行為がなされた場合に、民法1013条の目的に反するものではないとして、相続財産の処分行為を有効とした裁判例があります(東京地判昭和63年5月31日参照)。
なお、遺言執行者がこのような同意をすることは、善管注意義務違反(民法1012条3項、644条)にならないか問題になりそうですが、遺言書の内容の変更に承諾した相続人自身が、後日、遺言執行者の任務違反を主張することは、信義則上許されないため(民法1条2項)、問題は生じないものと考えます。
遺言書や遺産分割に関しては、後日、大きな紛争になることが少なくなく、紛争になった場合には、解決までに数年を要することもあります。
そして、紛争になった場合、適切な証拠がないと、裁判所に言い分を認めてもらえないことが多いのが実情です。
相続問題(遺言書、遺産分割、遺留分請求、相続放棄等)でお悩みの場合は、できるだけお早めに、法的な紛争解決の専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

