お知らせ

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問題社員に退職してもらいたいときは(退職勧奨について)

目次

1 辞めさせたい問題社員がいる場合

2 解雇と退職勧奨

3 退職勧奨にもリスクがある

4 退職勧奨の注意点

1 辞めさせたい問題社員がいる場合

問題社員に日々頭を悩ませている中小企業の経営者の方々は少なくないと思われます。

「遅刻や早退が頻繁に発生する。」「社内でコミュニケーションを取ろうとしない。」「業務の遂行能力が著しく低い。」「社内でセクハラなどのハラスメント行為を行う。」「再三指導しても問題行動に改善がない。」など、他の従業員の業務遂行や意欲にも悪影響を及ぼすため、このような問題社員をなんとか辞めさせられないものか、苦慮されているというお話を伺う機会がよくあります。

  

2 解雇と退職勧奨

問題社員を辞めさせる方法としては大きく2つあります。

解雇と退職勧奨です。

解雇とは、従業員(問題社員)の同意なしに、会社からの通知によって、一方的に雇用関係を終了させることです。

一方、退職勧奨とは、従業員(問題社員)から退職の同意を得て、合意により退職させることです。

このように、解雇と退職勧奨の大きな違いは、従業員(問題社員)の同意があるかどうかです。

解雇をすると、従業員(問題社員)から、不当解雇であると主張され、訴訟・労働審判・団体交渉等に発展するリスクが大きいため、解雇の前に退職勧奨を行うことが原則になります。

3 退職勧奨にもリスクがある

解雇によるリスクを回避するために、まず退職勧奨を行うことが原則になりますが、退職勧奨だからといってリスクがないわけではありません。

退職勧奨の方法によっては、退職勧奨が違法となることもあるのです。

長時間、多数回にわたる退職勧奨

過去の裁判例(全日空事件。大阪地裁判決平11.10.18)には、約4か月の間に30回以上面談を行い(中には8時間もの長時間にわたる面談もあった)、面談時に大声を出したり、机をたたく等の行為があった事案について、違法な退職勧奨として不法行為の成立を認め、慰謝料90万円の支払を命じられた事例もあります。

相手が問題社員であったとしても、退職勧奨の頻度、回数、面談における発言内容には注意する必要があります。

退職の意思表示に瑕疵がある場合

過去の裁判例(昭和電線電纜事件。横浜地裁川崎支部判決平16.5.28)には、退職勧奨の際、自ら退職しなければ、勤務成績不良により解雇する旨の発言があり、従業員が退職に応じたという事案について、解雇理由が存在しないにもかかわらず、従業員は退職勧奨に応じなければ解雇されると誤信した結果、退職の合意の意思表示を行ったものと認定し、意思表示に錯誤があり退職の合意は無効であるとされた事例もあります。

退職届が無効と判断された場合には、会社は従業員を復職させた上で、退職以降の賃金をさかのぼって支払わなければならなくなり(バックペイ)、非常に大きな損失となります(バックペイとして1000万円の支払を命じた裁判例もあります)。

相手が問題社員であったとしても、退職勧奨を行う際には、「退職届を出さなかったら解雇する」などの発言をしないように注意する必要があります。

4 退職勧奨の注意点

3で述べたこと以外にも、退職勧奨を進める上で注意すべき点をいくつかあげます。

即時の回答を求めない

退職勧奨を行う際は、従業員(問題社員)に対して、即時の回答を求めてしまいがちです。

しかしながら、このような態度は脅迫的な面談であると理解され、従業員(問題社員)の反発を招きかねません。

従業員(問題社員)に退職方向で検討する様子が見られないのであれば、少なくとも1週間程度の検討期間を設けて、次の面談日程を決めるなどすべきです。

会社を退職するかどうかは従業員(問題社員)にとっては、その後の生活、人生に関わる重大な局面ですので、この点に配慮する必要があります。

従業員(問題社員)の批判に終始しない

退職勧奨を受ける側の従業員(問題社員)も人間であるため、どうしても自分自身に対して批判されると反抗する気持ちが生じてしまい、これが原因で交渉がうまく進まないということになりかねません。

会社としては、従業員(問題社員)を批判するのではなく、会社の業務内容や社内の雰囲気に従業員(問題社員)がミスマッチである、会社の求める水準の業務をこなしていくには従業員(問題社員)の負担が大きいなど、従業員(問題社員)のために転職したほうがよいのではないかという視点で話を進めるとよいでしょう。

相応の条件を提示する

退職勧奨によって退職が実現した場合には、解雇によるリスクがなくなるため、会社にとっては非常に大きなメリットがあります。

会社としては従業員(問題社員)が退職勧奨に応じるように、相応の条件を提示すべき場合も多いと思われます。

従業員(問題社員)の反応を見ながら、ケースバイケースで柔軟に付加的な条件(在職中に転職活動ができるように退職時期を数か月後とする、退職時に月額給与の数か月分を上乗せ支給する等)を検討・提示すべきです。

書面(退職届や退職合意書)を作成する
退職合意書を作成する場合には、秘密情報の不使用や必要に応じて競業避止義務等の条項を設定しておくと、退職後のトラブル防止、会社の利益確保につながるのでお勧めします。

問題社員を辞めさせる場合には、解雇であっても退職勧奨であっても大きなリスクを伴います

辞めさせたい問題社員がいる場合には、会社のリスクを最小限にするために、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

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