お知らせ

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労働災害にあってしまったときには

目次

1 はじめに

2 労働災害とは

3 事故発生直後の場合

4 事故により治療中の場合

5 障害が残った場合

6 会社に対して損害賠償請求する場合

1 はじめに

 お怪我をされて損害賠償請求などをするケースは、交通事故(人身傷害)などに限られたものではなく、お仕事中にお怪我をされたようなケース(労働災害)もあり得ます。

 今回は、労働災害にあってしまった場合についてご説明いたします。

2 労働災害とは

 労働災害には、①業務災害と②通勤災害があります。

 ①業務災害は、工場の機械に体が挟まれたケースや、荷物が頭部に落ちて来たようなケースであり、業務が原因となって発生した事故による負傷、疾病、障害のことをいいます。

 また、②通勤災害は、通勤途中で交通事故に遭ったようなケースであり、この場合の通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復する途中であり、業務の性質を有しないものをいいます。

 ①業務災害や②通勤災害に該当する場合には、労災保険が適用されて様々な補償を受けることができます。また、保険給付のみならず、会社に対して安全配慮義務違反に基づき損害賠償請求をすることもできます。

3 事故発生直後の場合

 お仕事中にお怪我をされた場合には、労災扱いになりますので、労災保険支給手続をして、適切な治療や休業補償を受けるようにしましょう。

 もっとも、会社によっては、いわゆる「労災隠し」(労災保険申請を怠り、私傷病扱いにすること)をする場合もありますので、要注意です。このような場合には、労働基準監督署に対して会社の「労災隠し」を申告するようにしましょう。

 また、労災申請手続に協力してくれる会社であっても、労災事故の発生・態様・原因について事実と異なる記載をする場合があるため、これについても要注意です。このような虚偽の事実が記載されてしまうと、労働基準監督署の調査結果が、まるで労働者の不注意によって労災事故が発生したかのようなものになり、労働者が会社に対して損害賠償請求をしても、会社が責任を否定して、損害賠償請求が認められない場合もあります。労災申請をする際は、災害の原因や発生状況を記載する欄に、会社の過失を裏付けるような主張を記載するように留意してください。

 労災申請をすれば治療費の負担がありませんし、休業が必要な場合には休業補償も受けられますのでそれで生活ができます(万が一、生活費が不足する場合には、差額分を会社に対して損害賠償請求することもできます)。事故発生直後は、治療を最優先にしてください。

4 事故により治療中の場合

 事故後は、できるだけ早期に病院に行って、適切な治療、検査を受けるようにしてください。事故直後に病院に行かず、日時が経過してしまうと、お怪我が事故によるものかどうか証明できなくなってしまうことがあるからです。

 また、医師に対して、痛みやしびれがある部位の全て、痛みの程度などをできるだけ正確に伝えて、カルテに記載してもらう必要があります。日時が経過してから医師に痛みを伝えても、やはりお怪我が事故によるものかどうか証明ができなくなってしまうことがあるからです。

 さらに、痛みやしびれがある部位については、レントゲンやMRI等の検査を受けるようにしてください。治療目的はもちろんですが、損害賠償請求を行う際に、具体的な症状を証明する手段となり得るという目的もあります。頚椎や腰椎の痛みやしびれがある場合には、特にMRIの撮影が必要です。

 

5 障害が残った場合

 お怪我の治療を続けたものの、従前の状態までには戻らず、これ以上は良くならない(これを「症状固定」といいます。)と医師から言われることがあります。

 もっとも、痛み、しびれ、可動域制限等が残っている場合等には、お近くの労働基準監督署に障害補償給付支給請求(後遺障害の申請)をし、障害等級(1級~14級)を決めてもらうことになります。

 この障害等級の認定は、労働基準監督署が行いますが、お怪我をされた方を治療した医師が作成した「後遺障害診断書」の記載に基づいて行われているため、医師による「後遺障害診断書」の記載は極めて重要です。そのため、治療中から、医師にお怪我の状態を正確に伝えて、カルテに記載してもらう必要があります。

 また、自己申立書という書類の「仕事上や日常生活上不自由なこと」、「痛みや運動制限など現在残っている症状」の各欄にできるだけ正確に不足することなく記載する必要があります。

 労働基準監督署は、「後遺障害診断書」や自己申立書等の資料を調査し、労働基準監督署の委嘱している医師の意見を聞き、その医師に直接、お怪我をされた方の状態を確認してもらった上で、障害等級の認定を行っています。

 正しい等級の認定がなされてこそ、適切な損害賠償額が決定されることになります。

6 会社に対して損害賠償請求する場合

 労働災害にあった場合、労災保険の給付(療養補償(治療費)、休業補償(休業損害)、障害補償(後遺障害の逸失利益))を受け、それで終わりであると思われる方が大多数であるように感じます。

 しかし、労災保険による補償対象は、治療費、休業損害の6割と、後遺障害の逸失利益の一部だけなのです。

 会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、労災保険で補償されない損害(休業損害の残り、後遺障害の逸失利益の残り、傷害の慰謝料、後遺障害の慰謝料)についても、会社に対して損害賠償請求することが可能になります。

 会社には、雇用契約に付随する義務として、労働者の健康・命を危険から守る義務(安全配慮義務)があります(労働契約法5条参照)。

 安全配慮義務は、業種、作業内容、作業環境、お怪我をされた方の地位や経験、当時の技術水準など様々な要素を総合的に考慮した上で、その内容が決まります。

 ①会社に教育不足があった場合、②会社から提供された機械や道具が原因になった場合、③労働安全衛生法や労働安全衛生規則に関する違反があった場合、④法令違反があるとして会社が労働基準監督署から是正勧告などを受けた場合、⑤会社が刑事処分を受けた場合には、会社の安全配慮義務違反が認められやすい傾向があります。

 労働災害にあってしまった場合には、治療、労災保険の申請、会社との交渉など、お体が痛い状況にもかかわらず、様々な問題に早期に対処しなければなりません

 紛争解決の法的専門家である弁護士に相談や依頼をすることで、様々なご負担が減ったり、賠償額が大幅に増額することがありますので、早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします

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