お知らせ

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相続が争いになってしまった場合には

目次

1 はじめに

2 遺言書の有無

3 遺産分割協議で決めること

4 遺産分割協議の方法

1 はじめに

 令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されたことの影響かどうかは不明ですが、最近、相続に関するご相談が増えている印象です。

 令和2年のMUFG資産形成研究所の発表によると、相続財産額の平均額は3273万円とされています。

 もっとも、実際に相続に関するご相談では、この金額を下回る場合も少なくはなく、紛争になる原因はお金欲しさだけが原因ではないように思われます

 例えば、相続人の一部の方が被相続人の介護をしており、介護に一切関わらなかった相続人と同じ取り分になるのはおかしいなど、これまでのご家庭の事情が複雑に絡み合って、感情的に激しく対立するようなケースもあります

2 遺言書の有無

 相続問題で感情的な対立が激化した後では、解決に長期間を要する場合が少なくありません。

 仲裁に適しているはずの被相続人は既に亡くなっており、残された相続人同士の話合いでは、お互いぶつかり合うばかりで、歩み寄ることができなくなっていることが多々あるように見受けられます。

 このような無駄な紛争を防止して、家族が離ればなれになる悲しい結末を回避するためにも、あらかじめ公正証書などで遺言書を残しておいた方が良かったと考えられるケースもあります

 遺言書があれば、被相続人の意思を尊重して、被相続人が作成した遺言書に従って遺産が分配されることになるためです(もっとも、遺言書がある場合であっても、相続人全員が合意をすれば、遺言書の内容と異なる方法で相続をすることも可能です。また、遺言書がある場合であっても、遺留分の問題が生じることもあります)。

 遺言書がない場合には、相続人間で遺産分割の協議を行うことになります。 

3 遺産分割協議で決めること

 遺産分割協議では、①法定相続人の確認、②遺産の範囲の確認、③遺産の評価の確認、④具体的相続分の合意、⑤具体的な分割方法の合意という順番に協議を進めることが多いです。

(1)法定相続人の確認

 被相続人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて、誰が相続人か調査します。

 この段階で、想定していなかった相続人(前妻の子など)が現れたりすることもあります。

(2)遺産の範囲の確認

 通常は、被相続人名義の財産が遺産の範囲となります。

 もっとも、例えば、被相続人が夫のために、夫名義で通帳を作って少しずつ貯めていた場合、この預金は夫名義であるものの、実際には被相続人の財産であるとして、遺産の範囲に加えられる可能性があります。

(3)遺産の評価の確認

 遺産の範囲が確定したら、それぞれの遺産となる財産にどれだけの価値があるか協議します。

 預貯金であれば、残高を見て確認します。

(4)具体的相続分の合意

 遺産分割協議は、法定相続分に従って分割することが原則となります。

 一方で民法上、特別受益や寄与分といった相続分の調整も認められています。

 特別受益は、生前に生活費の援助として贈与があった場合に相続財産に持ち戻して評価しようとするものです(もっとも、被相続人がこの持戻しを免除している場合もあります)。

 寄与分は、療養看護などの献身があった場合に、これを評価して相続財産の取得分を調整しようとするものです。

(5)具体的な分割方法の合意

 具体的に、誰がどの財産を取得するか合意します。

 例えば、ある相続人が自分の法定相続分を超える評価額の不動産を取得した場合、調整として、他の相続人に対して代償金を支払うという方法が合意されることもあります。

(6)遺産分割協議書の作成

 すべての合意をした後は、遺産分割協議書を作成して各自必要な手続(預貯金の払い戻し、相続登記手続等)を行うことになります。

4 遺産分割協議の方法

(1)任意交渉

 遺産分割の協議は、法定相続人が集まって、話し合うこと(任意交渉)が出発点となります。

 もっとも、どのような判断が妥当なのか分からず、専門家に助言を求める必要がある場合もあり、仮に争うつもりがなかったとしても、簡単には合意に至らないというのが実情かと思われます。

 中には、遺産分割の協議をきっかけに、これまでの思いをぶつけるような相続人もいて、協議そのものが大きなストレスになる場合もあります

 任意交渉で解決しない場合には、裁判所に申し立てる必要があります。 

(2)遺産分割調停

 遺産分割調停は、中立公平な裁判所が相続人の間に入り、話合いを行う手続です。

 遺産分割調停では、裁判所の選任した調停委員(2名)が相続人から個別に話を聞いて、解決案を提案します

 調停委員は解決のために最大限の努力をされますが、相続人間の主張の隔たりが大きい場合には、なかなかすぐには解決しないことも少なくありません。

 調停は1、2か月に一度の割合で開催され、解決に至るまでの平均期間は概ね1年程度とされています(2、3年かかるケースもあります)。

 調停で解決に至らない場合には、遺産分割審判に進むことになります

(3)遺産分割審判

 遺産分割審判は、裁判官が遺産分割方法について判断を下す手続です。

 裁判官は、双方の主張の適切さや、適正な証拠を提出しているかどうかを考慮した上、当該事案において適切と考えられる方法で遺産分割を決定します。

 遺産分割審判では、裁判所が主導して審理を進めるため、必要な主張・立証(証拠提出)を行うなど、細かな手続に適切に対応する必要があります。

 遺産分割の協議は、相続人間の感情的な対立から大きなストレスとなる場合があり、裁判所の手続では、法的に整理をした上で主張・立証を行う必要があること多く、専門性が高いことから、ご自分の主張を認めてもらうことは困難な場合が多々あります。

 相続が争いになってしまった場合には、ご自分に有利な主張の整理、証拠収集活動等を行うため、できるだけ早い段階で、紛争解決の法的専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします

 また、相続が争いになる前に遺言書を作成しておくことも選択肢の一つですので、是非ご検討ください。

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