お知らせ

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特別縁故者に対する相続財産分与とは

目次

1 はじめに

2 特別縁故者とは

3 相続財産分与の相当性

4 相続財産分与の手続

1 はじめに

 相続人がいない方の療養看護等に努めていたところ、その方がお亡くなりになり、その方の相続財産や墓じまいについてお困りであるということで、法律相談にご来所される方が時々いらっしゃいます。

 今回は、このような方々のために、「特別縁故者に対する相続財産分与」(民法958条の2)という制度についてご説明いたします。

2 特別縁故者とは

 お亡くなりになった方に相続人がいない場合には、遺言書(民法968条、同法969条等)や死因贈与契約(民法554条)がない限り、原則として、その方の相続財産は国庫に帰属することになります(民法959条)。

 しかしながら、日本では欧米と異なり遺言制度が普及して一般化しているとは言い難い状況です。

 仮に、お亡くなりになった方(被相続人)に、内縁配偶者、事実上の養子、老後の面倒を見てくれた者など、事実上相続人と同視できる者や、遺言書を書く機会があったならばその者に財産を分け与えたことが推測されるような関係者がいるのであれば、国庫帰属の前の段階で、その者に相続財産を分与するのが、社会政策的にも妥当ですし、被相続人の意思にも合致します。

 そこで、民法は、このような準相続人あるいは実質的な相続人ともいうべき利害関係者の保護を図るため、特別縁故者に対する相続財産分与の制度を設けております(民法958条の2)。

 民法958条の2第1項は、「前条の場合(相続人としての権利を主張する者がない場合)において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定しています。

 前二者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者)は例示であり、「その他被相続人と特別の縁故があった者」については、「立言の趣旨からみて同法条に例示する二つの場合に該当する者に準ずる程度に被相続人との間に具体的且つ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で、相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった者をいうものと解するのが相当である」と判断した裁判例(大阪高決昭和46年5月18日)があります。

 家庭裁判所に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行う際は、特別縁故者に該当することを裏付ける資料として、陳述書(申立てされる方と被相続人とのこれまでの関係性等を書いた書類)、戸籍謄本、戸籍附票、日記、エンディングノート、手紙、写真、領収書、通帳などを提出することが考えられます。

3 相続財産分与の相当性

 家庭裁判所は、仮に申立人が特別縁故者に該当することを認めた場合であっても、被相続人に分与ができる財産が存在し、分与を「相当と認めるとき」(民法958条の2第1項)でなければ、申立人に相続財産を分与する旨の判断はしません。

 分与を「相当と認めるとき」の判断基準に関しては、明文はありませんが、裁判例の中には特別縁故者との縁故関係の厚薄、度合、特別縁故者の年齢、職業や、相続財産の種類、数額、状況、所在等一切の事情」を調査し、これを参酌して決めるべき(高松高決昭和48年12月18日、広島高決平成15年3月28日)とするものがあり、一切の事情の中には被相続人の意向も含まれるとする裁判例(大阪家審昭和57年3月31日、鳥取家審平成20年10月20日)もあります。

 条文上は「相続財産の全部又は一部を与えることができる」(民法958条の2第1項)と規定されていますが、全部分与か一部分与かの問題も「相当と認めるとき」の判断に含まれており、全ては裁判所の裁量にかかっており、明確な基準を見出すことは難しいのが現状です。

 なお、一部分与された事例としては、①被相続人の菩提寺たる宗教法人(東京家裁審判昭和40.8.12)、②父に命じられて被相続人を13日間看病した6親等の血族たる当時18歳の娘(東京家裁審判昭和40.7.15)、③50余年にわたる師弟長幼として交わりのあった「人生の奇縁」ともいうべき者(大阪家裁審判昭和38.12.23)、④30年間「夫が死亡して後は縁辺の少ない独り身の被相続人の生活を・・・陰に陽に助けた」知人(大阪家裁審判昭和39.7.28)、⑤外地で親しくなり、引揚げ後被相続人宅に同居してその療養看護に努めた知人(高松高裁決定昭和48.12.18)が挙げられます。

4 相続財産分与の手続

 特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、相続財産清算人の選任・相続人捜索の公告(民法952条第2項)の期間(6か月以上)に権利を主張する者がない場合(民法958条)、公告期間満了後3か月以内に、家庭裁判所に対して行う必要があります。家庭裁判所は、相続財産清算人の意見を聴いた上(家事事件手続法205条)、審判を行うことになります。

 特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行う前提として、利害関係人から家庭裁判所に対して相続財産清算人の選任申立てを行う必要があります(家庭裁判所の判断により、50万円から100万円程度の予納金を納付することになります)。

 家庭裁判所の手続は一般の方々にとって難しい面も少なくないため、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをご検討されている方は、お早めに、法的紛争解決の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします

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